熊本の産婦人科、無痛分娩などは慈恵病院まで。

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こうのとりのゆりかご|慈恵病院

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防犯カメラ設置のご報告
当院は平成27年5月20日「こうのとりのゆりかご」(ゆりかご)近くに防犯カメラを設置しました。ゆりかご運営にあたっては預け入れに事件性がない場合は警察の捜査の対象となりません。カメラの設置は、ゆりかごに赤ちゃんの預け入れをするお母さんやお父さんの誤解を招く可能性があります。カメラ設置にあたりましては、その経緯もご説明する必要があると判断し、ホームページに掲載いたしました。
 
各項目をクリックしていただくと、内容をご覧になれます。
設置の目的
①事件性のある預け入れへの対応
平成26年10月の乳児死体預け入れ事件のように、事件性のある事例が発生した時は警察の捜査対象となります。
このような場合、預け入れをした人物の身元が判明できなければ、事情がわかりません。他に方法がなければ、カメラの情報に頼らざるを得ません。
 
②職員の安全対策
過去、預け入れをした男性に看護師がお声かけをした事がありました。この時、その男性が威圧的に反応し、看護師が身の危険を感じたこともあります。
このようなケースはまれではありますが、職員の安全対策を講じる必要があります。
カメラの機能
①平時には記録映像を容易に確認出来ない構造です。院長であっても手続きをし、専門家に依頼しなければ映像を見ることができません。
 
②記録映像は7日間(168時間)を経過した時点で自動消去されます。
カメラの映像を提供する条件
カメラの映像を確認するのは、次の要件を満たしたときのみです。
 
事件性があると警察が判断し、警察から記録提出の要請があった場合で、かつ、病院内の「ゆりかご委員会」で記録提出の承認を得た場合。
*ゆりかご委員会は9名で構成され、3分の2以上の賛成が必要です。
 
ただし、捜索差押許可状に基づく捜査においては、この限りではありません。
 
あくまでも、事件性のあるケースでしか映像提供はなく、通常の預け入れ事例には適用しません。
平成27年10月の乳児死体預け入れ事件までに100人以上の預け入れがありましたが、カメラが必要だったと考えられるのは、この乳児死体預け入れ事件のみです。
 
当然のことですが、赤ちゃんの出自を明らかにするために用いることはありません。
設置を決定した背景
平成26年10月、死後数日経過し腐敗の始まった赤ちゃんの遺体がゆりかごに預けられました。
 
これは事件になります。
赤ちゃんがどのような経過で亡くなったのか確認しなければいけません。意図的に殺されたのかもしれませんし、虐待の末に死亡したのかもしれません。
 
今回は、たまたま職員の一人が不審に思い、車のナンバーを控えていたため、お母さんの身元がわかりました。
その結果、お母さんが家族にも相談できず一人で悩み、どうしようもなくなって自宅出産した経緯を知る事ができました。
事情を知ることでお母さんの気持ちや行動を(全てではないとしても)理解することが出来ます。これは当院の職員だけでなく、判決を下された裁判官、そして社会にも同様であることと思います。
 
しかし、お母さんの身元もわからず、赤ちゃんが亡くなった経緯やお母さんの事情がわからなければどうなっていたでしょうか?
「ひどいことをする親だ」
「赤ちゃんを殺して『ゆりかご』に棄てたのではないか?」
と、非難や想像が渦巻き、
「きっかけを作ったのはゆりかごだ」
と、非難の矛先がゆりかごのシステムそのものに向かう可能性もあります。
 
このケース以外にも平成27年には、ゆりかごの中ではなく、ゆりかごの扉の前の床の上に赤ちゃんが置かれていた事例が発生しました。お母さんは、赤ちゃんを置いた直後に当院へ電話をし、「今、赤ちゃんを預けました」と伝えたため病院職員が赤ちゃんを保護しました。
 
いずれのケースもお母さんの身元が判明し、事情を知ることができましたが、お母さんが赤ちゃんを愛していることや、お母さん自身の力では赤ちゃんを育てられないこともわかりました。
しかし、事情がわからなければ、「ひどいことをする親」と認識され、ゆりかごはそれを助長するシステムという指摘を受けたかもしれません。
 
ゆりかごの基盤は脆弱です。運営の中心は熊本の民間中小病院です。行政の協力によって成り立っているのは事実ですが、一方で国は関与を避け、熊本市や第三者委員会から、その存在について疑義を抱かれることも多々あります。世論やマスコミから批判されることもあります。
 
ゆりかごは、赤ちゃんを犠牲者にしないための、お母さんを犯罪者にしないための最終手段です。このシステムは、慈恵病院のものでも、熊本のものでもありません。日本の社会のものです。
何よりも赤ちゃんのために、ゆりかごという選択肢、セーフティーネットを存続させることが重要です。
 
もしも、ゆりかごが廃止になれば、復活させるのは容易ではありません。
 
赤ちゃんが過酷な状況で預けられたとき、例えば次のような状況が発生したとき、社会はどう受け止めるでしょうか?
 
「腐敗した赤ちゃんの死体が預けられた」
「預けられた赤ちゃんが間もなく亡くなった」
「ゆりかごの外に赤ちゃんが放置してあった」
「預け入れられた赤ちゃんが息絶え絶えだった」

 
メディアを含めた日本の社会は、これらの事態を事情も聞かずに受け入れることはできないと思います。
事情がわかれば許容できるのかもしれませんが‥。
 
赤ちゃんが犠牲となる殺人、遺棄は現在進行形です。
これらの事件は、日本の社会ではローカルニュースでこそ取り上げられることが多く、全国版で大きく取り上げられることが珍しいため、現実感に乏しい事象です。
しかし、過去1年間だけでも以下のような事件がありました。
 
・17歳の高校生が、「妊娠の事実を親や学校に知られたくないと思い、流産させる薬を飲んだ」。出産した赤ちゃんの遺体をタオルに包み、自宅のベッド上に放置したが、処置に困り友人に相談して発覚。
 
・17歳の母親がトイレで出産直後に赤ちゃんの口に紙を詰め込み窒息死させた。直後に赤ちゃんを医療機関に連れて行ったが、赤ちゃんの口の中には紙が詰まっており、医療機関が110番した。
 
・17歳の高校生が自宅トイレで出産した赤ちゃんの死体を川へ遺棄。へその緒が付いたままの赤ちゃんの死体が川に浮かんでいるのを小学生が発見。
 
・保育士が自宅の風呂場で出産した直後の赤ちゃんの顔にシャワーで湯をかけたり、洗面器の中に沈めたりして殺害した後、近くの店舗前のゴミ箱に遺棄。「親や友人に妊娠が発覚するのが怖かった」
 
これらは、過去1年間に報道された事件の一部です。表に出ていない殺人や遺棄はもっと多いはずです。
妊娠の事実を隠し通さなければならない親は、通常では考えられないような行動をとり、事件につながることがあります。
 
ゆりかごを訪れる方の中に事件性のある行動をとる人が出てくる可能性も否定できません。
その事情を的確に把握するためには、身元の確認が必要です。
当院の基本的な考え方
基本的には防犯カメラ設置に反対でした。
カメラで監視され身元が判明することを恐れる結果、保護者が赤ちゃんを「こうのとりのゆりかご」に預けず、遺棄したり殺害することを心配するからです。
 
「赤ちゃんを棄てるのではなく、ゆりかごに預けて欲しい」
「赤ちゃんを殺すのではなく、ゆりかごに預けて欲しい」
 
この呼びかけに保護者が応えてくれる環境を用意しているのですが、反面、カメラは、それを妨げる可能性があります。
今後の状況によってはカメラ撤去の可能性も
もしカメラ設置後に赤ちゃんの預け入れが全くなくなれば、ゆりかご自体が機能していないことになります。
棄てられる、殺される赤ちゃんの事を考えれば、カメラ設置の判断は誤りだったとも考えられます。
その時には、カメラ撤去も考慮しなければなりません。
預け入れを考えているお母さん、お父さんへ
元気な赤ちゃんが、ゆりかごの中に預け入れられた時、私たちはカメラでお母さんやお父さんの身元を確認する事はありません。
障がいのある赤ちゃんが預けられたときも同じです。明らかな事件性がある時にしかカメラの画像を使用しません。

 
ゆりかごに赤ちゃんを預けるということは、「いのちを助けたい」という強い思いだと考えます。
ただ、ご自分で育てる力や気持ちに限界のある状況なのでしょう。
 
追い詰められた結果、赤ちゃんが犠牲者に、お母さんが犯罪者になってしまうことを心配します。
そうなる前に、ゆりかごに赤ちゃんを預けて下さい。
 
もちろん、ゆりかごに預けるその前に、当院の電話相談を利用していただくのが一番です。
私たちは全力で、より良い解決法をご提案します。
絶対に守らなければならない秘密があれば、それも尊重します。
私たちを信じて、ご相談下さい。
相談員を始め病院職員は、お母さん、お父さんからのお電話をお待ちしています。

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