慈恵病院 特別養子縁組

年齢制限はありますか?

年齢の数字を挙げて線引きすることはできません。
ただ、ご年齢が高いと養親の候補となりにくいことは否めません。
養親希望のご夫婦の大部分が不妊治療を経験され、奥様が40歳を超えるまで治療を続けられることは少なくありません。ですから治療を断念して特別養子縁組を希望なさるご夫婦の年齢は高い傾向にあります。不妊治療に携わる産婦人科病院の立場としましては、養子縁組の赤ちゃんが授かるようにしてさし上げたい気持ちは山々です。
しかし、特別養子縁組は子どもの福祉のためにある制度で、あっせん者はお子様の代理人です。お子様の側に立ってあっせんを進めて行く責務があります。
そこで、養親様のご年齢に関して以下の考察を行いました。
お子様が就職なさるまでは養親様が経済的な支えです。退職や病気で養親様に経済力がなくなってしまいますと、お子様の不安は強くなりますし、場合によっては経済的な理由から進路を変更しなければならなくなります。
退職という観点では、「養親様が退職年齢に達するまでにお子様が就職できる」前提が望ましいと思います。ただ経済的な意味での退職年齢の評価は養親様の収入額や預貯金額によっても変わりますので、個々のケースで検討を要します。
一方、健康面から考える養親様の年齢評価も大事です。養親様が病に倒れると、お子様には経済面のみならず精神面でも不安が生じます。
慈恵病院に限らず病院は体調を崩した患者様が毎日お越しになる所ですので、そこで仕事をする立場の者としましては、加齢とともに病気が発生しやすいことを無視できません。脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、癌などは年齢と共に増えてきます。その様な病気は40代からしばしば発生し、50代では明らかに増え、60代では死亡する人も目立ってきます。この傾向を考えますと、「養親様が退職年齢に達するまでにお子様が就職できる」という先の前提は健康面からも必要と考えます。
その他、「子育てには体力が要る」「お子様と養親様の年齢差がありすぎると、お子様に精神的な負担が生じないか?」などの議論もあります。
これらの点は個人差が大きく、一律に決められません。
大事なことは、「お子様が自己肯定感を持ちながら人生を歩むことができるか」です。
そのお手伝いをしていただけると確信できるご夫婦を探しています。
年齢の観点を無視することはできませんが、それを上回るものをお持ちと判断させていただいた場合には、お子様を託させていただきます。
ただ、それは「収入の多さ」や「社会的地位」ではありませんので、ご理解ください。

収入が多い夫婦が優先的に養子縁組をできますか?

養親様の収入につきましては、一定基準を満たせば、収入の高低で優先順位が変わることはありません。ただ、その基準を数字でお伝えすることはできません。例えば農家で自給自足に近いご家庭では、現金収入が多くなくても済みます。東京と熊本では、分譲マンションの価格や賃貸マンションの家賃は違います。収入金額だけでは単純に比較できません。
ひとつの目安として、お子様が4年制大学を卒業されるまで家計を支える事ができる収入は必要と考えています。大学に進学したいかどうかは18年後にお子様がお決めになる事ではありますが、選択肢を提供できるご家庭が望ましいと思います。

夫婦どちらかが育児に専念しなければいけませんか?

これはとても難しい問題で病院内でも度々議論になりました。
職場によっては出産後数ヶ月で復帰しなければいけない所もありますので、私たちが休職期間を指定してしまいますと、養親になれないご夫婦が自動的に決まってしまいます。私たちにとりまして心苦しいことです。
しかし、この問題は特別養子縁組あっせんの原点に立って考えるべきと思います。特別養子縁組は子どもの福祉のためにある制度で、あっせん者はお子様の代理人です。
特別養子縁組のお子様は、「真実告知」を巡って厳しい状況に立たされることがあります。これを前向きに受け止めるのか、あるいはネガティブに捉えてしまうのかは、お子様がどれだけ自己肯定感を持てるかが関係しますし、これには築き上げた親子の愛情・信頼関係が影響します。ですから、他のご家庭以上にお子様と接する時間を多く作っていただきたいと思います。
また、養子様に限らず、お子様は知的障害、発達障害などの問題に見舞われることがあります。これは生まれたての赤ちゃんの状態ではわからない部分です。その様な場合でも、ご家族様が支援していただける体制が必要です。
このような観点から赤ちゃんが1歳になるまでは、ご夫婦のどちらかには育児に専念していただきたいと考えます。しかし同居なさっているお母様(赤ちゃんのおばあちゃん)がお世話をしていただく場合などは、この限りではありません。

すでに実子や養子がいる夫婦でも申し込みできますか?

養子様にはご兄弟・ご姉妹があった方が良いと考えています。
すでに実子様や養子様がいらっしゃるご夫婦様でも、お申し込みいただけます。

説明会から登録までにどのくらいかかりますか?

家庭訪問の実施スケジュールにもよりますが、2~3ヶ月くらいをお考えください。

登録をしてからどのくらいで赤ちゃんを紹介してもらえますか?

具体的な時期のお約束はできません。
2~3ヶ月でご紹介できることもありますが、1~2年経ってもご紹介できないこともあります。

実親様が赤ちゃんを戻してほしいと申し出た時、実親様に援助したお金は戻ってきますか?

全額返金させていただきます。
最初は赤ちゃんを養親ご夫婦に育ててもらうつもりだった女性でも、いざ赤ちゃんを出産すると、赤ちゃんを手放せない気持ちになってしまうことがあります。その場合、実親様のご希望が優先しますので、赤ちゃんは実親様の元に戻されます。
しかし、実親様は養親様から援助された生活費、医療費を返還しなければいけません。援助された実親様は元々経済的に困っている方が多いですから返還は困難です。結局、赤ちゃんを取り戻したいと思っても援助金がネックになって取り戻すことができません。
このような理由から、「自分で育てるか、養子に出すか迷っている」女性には、できるだけ養親様からの経済的な援助を避け、公的機関からの経済的援助を受けていただくようにお願いしています。
養親様に経済的援助をお願いするのは、実親様がほぼ間違いなく特別養子縁組を希望し続けられると確認できたケースに限ります。

養子縁組手続きには弁護士が必要ですか?

原則として弁護士さんのお手伝いは必要ありません。家庭裁判所の手続きは難しくありません。文章を読み、字が書ければ、ご自身で手続きをしていただけます。
費用も収入印紙代800円程度です。
ご不明な点につきましては慈恵病院の職員がアドバイスいたします。

お腹が大きくなってきたのに、親に妊娠のことを言えません。

おつらい立場をお察しします。慈恵病院には同じ悩みを抱えている女性からのご相談をいただきます。
私たちは、そのような方々のお役に立ちたいと思っています。ご自身の身元情報を明かしていただかなくても大丈夫ですので、まずはご連絡ください。

赤ちゃんを匿名で「こうのとりのゆりかご」に預けようか、特別養子縁組にしようか迷っています。どちらがよいのでしょうか?

ご自身が絶対に身元を明かしたくないとお考えでしたら、「こうのとりのゆりかご」に赤ちゃんを預けていただくことになります。
しかし、身元を明かしても良いのでしたら、ぜひ特別養子縁組になさってください。
匿名で預けられると、赤ちゃんは間もなく乳児院で育てられることになります。乳児院の職員の皆様は赤ちゃんを育てるために力を尽くしていらっしゃいますが、行政から支給される予算が少ないため、職員数を十分に確保できないのが現実です。赤ちゃん1人に対して大人が1人付けると良いのですが、現実は程遠い状況です。赤ちゃんが泣いていても、すぐには対応できないことも少なくありません。
特に出生後3ヶ月~12ヶ月は赤ちゃんにとって大事な時期です。泣いたらすぐに抱っこしてお世話をしてくれる存在が必要です。その事が赤ちゃんのすこやかな成長につながります。特別養子縁組でしたら、育てのお父さん、お母さんがそばにいてくれます。
赤ちゃんの幸せのために、特別養子縁組を活用していただきたいのです。