慈恵病院 無痛分娩

無痛分娩が適している方・いない方無痛分娩が適している方・いない方
無痛分娩は、ほとんどの妊婦さんにとって、安全かつストレスの少ない分娩法です。特に陣痛の痛みがトラウマになっている方、不安感が強く妊娠をためらっていらっしゃる方などは、無痛分娩を選択することによって、安心してお産に臨めるのではないでしょうか。ただ、体質や持病の関係で、無痛分娩が難しい場合もあります。ご自身の体質やお産に対する思いと照らし合わせて、自分らしいお産の方法を選んでいただけたらと思います。
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無痛分娩が適している方
陣痛に対して強いストレスや不安を感じている方

陣痛に対して感じるストレスには個人差があります。ほとんどの妊婦さんは陣痛を「痛い」と感じるのですが、それが限界を超えるほどに強い妊婦さんには無痛分娩が適しています。例えば次のようなケースです。

 

・前のお産の痛みがトラウマになって、次の妊娠を思いとどまっているほどの方
・パニック障害などの心の病気で、陣痛に対する不安が強い方
・「私は痛がりなので…」と分娩前から不安を感じ、自信のない方
・陣痛の痛みが強すぎて「帝王切開にして下さい」と分娩中におっしゃる産婦さん。帝王切開は母体にとって下からのお産よりリスクが高まりますから、「痛い」だけの理由でしたら、帝王切開よりも無痛分娩の方が良いと思います。

高血圧の方

陣痛の痛みがあると、人間の血圧は上がります。もとから血圧の高い産婦さんなら、さらに血圧が上がって、けいれんを起こしたり頭蓋内に出血が起きたりします。ですから、血圧が高い産婦さんは下からのお産を断念して帝王切開になることがあります。しかし、無痛分娩で陣痛の痛みを軽くすれば、血圧の上昇を抑えることができますから、下からのお産を達成することができます。

骨盤位(逆子)、双胎(双子)など、緊急帝王切開術になる可能性のある方

逆子や双子のお産では、分娩の途中で急に赤ちゃんの状態が悪化し、緊急帝王切開になることがあります。それ以外でも、お産は常に赤ちゃんの急変の危険性を抱えています。無痛分娩では、すでに弱い麻酔状態ができていますから、麻酔チューブに麻酔薬を追加注入すれば、10分ほどで帝王切開に取りかかることができます。
自然分娩中の産婦さんに帝王切開をしようとすれば、麻酔から始める必要がありますので、プラス10分はかかります。赤ちゃんの状態が悪化した際には1分を争いますので、帝王切開にすぐ取りかかれる無痛分娩は有利です。「無痛分娩は恐い」と思っていらっしゃる方は少なくないと思いますが、産婦人科医の立場からすれば、むしろ速やかに帝王切開に切り替えることができる無痛分娩の産婦さんの方が安心なのです。

無痛分娩が適していない方

無痛分娩ができない妊婦さんは、ほとんどいらっしゃいません。ただ以下の場合には、無痛分娩ができないことをご了承ください。

極度の肥満の方

軽い肥満なら大きな問題はありませんが、体重が80~90kgになると、麻酔が難しくなります。無痛分娩に用いる硬膜外麻酔では、背中に麻酔の針を刺すのですが、針を刺す場所は背骨を目安にして決めます。つまり背骨の突起と突起の間にある「くぼみ」を目がけて針を刺すのです。
ところが、肥満で背中に脂肪が付いていると、皮膚が分厚くなってしまって背骨に触れることができません。目標点が分からずに麻酔の針を入れると、神経を傷つけてしまいかねませんので危険です。肥満体型で「私の麻酔は大丈夫だろうか」とご心配な方は、背中を曲げて、ご自分で背骨に触れてみてください。背骨の突起と「くぼみ」の区別が付けば大丈夫です。

心臓病、血液病、神経系の病気がある方

ただし、これらの病気を持っている妊婦さん全員に無痛分娩ができないのではありません。一部の病気だけです。例えば血液の病気については、出血が止まりにくくなる病気の場合は無痛分娩ができませんが、ほかの多くの血液病であれば、問題なく無痛分娩を行うことができます。詳しくは外来で直接、医師にご確認ください。

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