陣痛の痛みとは?
陣痛がきた産婦さんの多くが「私は陣痛に耐えられるのかしら?」と不安になられます。初めてお産を経験される方にとって、陣痛がどのようなものかは想像すら難しいでしょう。もちろん、男性は一生経験できない痛みですから、余計に理解しにくいものです。さまざまな言葉で表現される陣痛とは、一体どのようなものなのでしょうか。
陣痛には個人差があります。
一般的に「鼻からスイカが出てくるような痛み」などと言われますが、下半身の痛みを上半身の症状で表現すると、かえってイメージしにくいように思われます。
産婦さんのコメントで比較的わかりやすい表現は、「生理痛の100倍くらいの痛み」、「お腹の中を刃物でグルグルかき回されているような痛み」、「ハンマーで殴られて腰が砕けるような痛み」、「気が遠くなるような痛み」、「この世の終わりかと思うような痛み」などです。
これらのコメントを見るだけでも、陣痛のストレスが大きいことは一目瞭然です。ただし、痛みの感じ方については個人差が大きく、「それほど辛くなかった」「違和感を覚える程度だった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
お産の痛みは、指の切断に匹敵?
右の図は、お産の痛みについて海外で発表された論文をアレンジしたものです。10〜50の数字は痛みの強さを表していて、数字が大きいほど痛みのストレスが強いことになります。
この研究によれば、陣痛の痛みは骨折よりも遥かに強く、特に初産婦さんの場合は、手の指を切断する痛みに匹敵するとも言われています。
昔のヤクザ映画では「指詰め」のシーンが出てきたりしていましたが、大の男がうずくまって唸る姿は見るに耐えないものでした。産婦さんは、これに耐えながら赤ちゃんを出産するのですから、すごいことです。
ここで興味深いのは、産前教育(母親学級など)を受けていないと、より痛みのストレスが強いという結果です。逆の見方をすれば、ソフロロジーなどの安産法に関わっていれば、さらに陣痛のストレスは少なくなると想定できます。
欧米では無痛分娩が当たり前?
整形外科の領域で、手の指を切断することは稀ですが、事故で切断された指をつなぐ手術が行われることは少なくありません。
このときに麻酔をしなければ、担当医は患者さまから「拷問!」と訴えられるかもしれません。ところが、同じレベルの痛みだったとしても、お産ではそれが自然であり、当たり前と受け止められているようです。
少なくとも、日本ではこの傾向が強く、欧米と異なります。
日本の医療のほとんどは欧米追随型ですが、無痛分娩については欧米のように普及していません。その背景には、日本人の我慢強さ、自然志向のほか、「陣痛に耐えてこそ母親」、「お腹を痛めて産んだ子は可愛い」に象徴される母親像が関係しているようです。